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インタビュー対応:本人

心臓の手術中に致死性不整脈が発生

心臓の手術中に致死性不整脈が発生したため、今後の治療の判断としてWCDを着用することについて先生からお話がありました。いつまた致死性不整脈が起こるかわからない状態であり、ICD植込みの可能性も考えているが、WCDを着用している3か月間に致死性不整脈が起こらなければICD植込みは行わないとのことでした。
ICD植込みについては、機械を体の中に入れること、それによって少しであっても体のラインが変わってしまうこと(自分にしかわからなくても抵抗があります)、また今後続くメンテナンスを考えるとどうしても避けたかったので、WCDを着用して何事も起こらないことを心から願いました。

ワンピースは着られない

WCDを初めて見たときは、想像していたより大きいなと思いました。ちょっと古臭い感じも(笑)
コントローラが少し重たいと感じましたが、慣れれば特に問題ありませんでした。ただ、肩からずっと下げるため首や肩が凝りました。開胸手術だったので体が落ち着くまでは自分でマッサージすることは難しかったのですが、夫が毎日マッサージしてくれましたのでだいぶ楽でした。
ベストとコントローラがコードでつながっているので、好きなワンピースが着られなかったのが少し残念でしたね。
不便に感じたのはそのくらいで、他は特にありませんでした。

「ひとりの時に倒れても大丈夫」という最後の砦感

退院初日、初めてひとりでWCD着用していた日が一番怖かったです。入院中は何かあっても先生や看護師さんがそばにいてくれる安心感がありましたが、退院したらひとりです。電気ショックが流れる非日常の装置を身につけていることが、それが自分の身を守るものであるとわかっていても、まるで爆弾を抱えている気持ちになりました。「WCDを身につけていれば意識を失っても大丈夫」と思いながらも、「いつ倒れるかわからない」「いつ電気ショックが流れるかわからない」という不安がありました。でも、無事な時間を重ねることによって、不安から安心に変わっていきました。WCDを着用することが日常になっていくことで、さらなる安心感が生まれました。WCDには「ひとりの時に倒れても大丈夫」という最後の砦感があり、精神的にとても助けられました。
幸いにも致死性不整脈は起こることなく3月の着用期間が終了しました。もちろんICDの植込みはしていません。本当に良かったです。

主治医

主治医コメント

独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 心臓血管外科 小坂井 基史先生



患者様はファロー四徴症術後で、肺動脈弁狭窄兼閉鎖不全症に対する再手術(肺動脈弁置換術)の終了間際に心室細動を繰り返し、直接心臓マッサージをしながら電気的除細動を行いました。数時間心室細動の再発がないことを確認した後、手術を終えました。術後は幸い合併症や不整脈の再発なく順調に回復されました。
循環器疾患の中でも“成人先天性心疾患”という分野では、患者様ごとに病態が千差万別です。特に再手術の際は、致死性不整脈を引き起こす因子は多岐にわたり、リスク評価も複雑です。本患者様の場合、二次予防のためには植込み型除細動器(ICD)導入が適切とも考えられますが、手術という特殊な状況下で一過性に生じた心室細動については明確な見解はありません。今回WCDを入院中から導入することで、原因精査や再発リスクの評価に要する時間を安心、安全に過ごしていただくことが可能となりました。使用期間中に再発は見られなかったので、現段階でICDの絶対適応ではないと判断しました。 本患者様のように致死性不整脈を合併した成人先天性心疾患患者の周術期管理において、WCDは非常に有用な選択肢であると感じました。今後も機会があれば適用したいと思います。

掲載:2021年04月30日